皆様、こんにちは。税理士の三田洋造です。
今回は引き続き、事業計画のことを書きます。(その1、その2もあわせてお読みください。)
事業計画の具体的な中身
事業計画を立てるというとき、その具体的な中身は何でしょうか。
それは、Excel等を使って数字を入れていき、当期及びそれ以降の利益とキャッシュがどうなっていくのかを、きちんと表を作って確認していくということです。
(※別にExcelではなくて財務会計ソフトの附属機能としての財務シミュレーション等と使うという手もなくはないですが、会社の社長や個人事業主の方が事業計画を立てるときには、そうした専門ソフトは使わないし、まず使えないと思いますので、ここでは除外しておきます。)
Excel等に個々の要素ごとに数字を入れて、利益が出るのか出ないのか、キャッシュフロー上の問題がないのか(キャッシュの「入り」と「出」から算出されるキャッシュ残高が常に確保されているか)などを、客観的に把握することが重要です。
例えば『売上高が1億円ならば利益が出るけれども、9500万円なら100万円の赤字になってしまう』というようなことは、事業計画の表を作って数字をいろいろと変化させて多角的に検証しないと明確には分からない、ということなのです。
キャッシュフロー面もまた同じです。
表を作って数字をいろいろと変化させてみないとキャッシュフローが明確には分からないのです。
事業計画の表は「利益(損益)」と「キャッシュフロー」の2つが同時に分かるような構造になっている必要があります。
そのような表は、損益計算書とキャッシュフロー計算書をともに理解できていないとなかなか作れなかもしれませんが、少なくともほとんどの現役の公認会計士や、税理士の中でもきちんとキャッシュフロー計算書を勉強したことがある人であれば作れるはずです。
社長や個人事業主が自分自身で作れなくても、税務顧問の会計士や税理士に依頼すれば、ひな形を作ってくれるかもしれません(もちろん有料の場合もありますが、それはそれで意味のある支払です)。
とにかく、頭の中の「なんとなくこうなっているはず」という極めてあいまいなイメージや思い込みだけでは、利益を出し、キャッシュを貯めていく、ということはほぼ不可能だと思います。
予定は未定だから計画を立てても無駄?!
ところで、事業計画と聞くと、「予定は未定であって、計画を立てても実行しなければ何も意味もない」とか、「そもそも予定どおり行く訳はないのだから、計画を立てても無駄」とか言う人も世の中には居るかもしれませんが、そういう声はとりあえず無視しましょう(笑)。
例えば古今東西の数多の戦争において、個々の戦闘の前には、その戦場の指揮官や参謀たちにより「机上演習(図上演習ともいう)」が必ず行われてきたはずですが、それと同じことが事業計画についても言える訳です。
陸戦だろうが、海戦だろうが、空戦だろうが、戦闘において事前の机上演習が行われていなければ、その戦闘は開始する前から負けるのに等しいと思います。
勝つために部隊を任されているのが指揮官ですから、勝つためのきわめて重要な一手段として事前の演習を行い、問題点を洗い出し、作戦を練り、勝てる戦闘方法を見つけだしてそれを部隊に実行させるように、十分に準備をしておくことが必須となります。
事業計画も、事前にそれを立てることがなければ、事業において利益を出す、キャッシュを貯めていく(戦闘においては「勝つ」ということですね)確率が、とても低いものになってしまいますし、下手をすると損失を出す、キャッシュが減る*、ということになってしまいます(戦闘においては「負ける」のと同じことですね)。
*ここで、キャッシュが減るとは、一概に悪いこと、負けることであるとは断言できません。事業年度の期首と期末を比較して、たとえば借入金を減らしたとか、設備投資をしたなどの理由により、現預金が減少することはあり得ることだからです。ただし長い目で見て、利益を出し続けていかなければキャッシュも増えていかないというのは事実です。
社長とか個人事業主の方々は、ここまで書けばもう十分ご理解できていると思いますが、最後にもう一度繰り返します。
利益を出す第一歩は、事業計画を立てることです。
なお、計画を実行することについては別のテーマになるので、それはまたいずれ、他の機会に書きたいと思います。